TPUフィラメントの3Dプリント時の注意点とコツ

「TPU(熱可塑性ポリウレタン)」ゴムのように柔らかく、それでいて樹脂らしい成形性が魅力の素材ですが、PLAと同じ感覚で造形するとトラブルになりやすい素材でもあります。

代表的なポイントをまとめます。

1. フィラメントが“柔らかすぎる”問題

TPUはフィラメント自体が柔らかいため、

  • エクストルーダー内で押し出し時に“クネる・折れ曲がる”
  • ボーデン方式のプリンターでは押し出し制御が不安定になる

といった現象が起きやすくなります。

可能であれば、ダイレクトドライブ方式のプリンターが有利です。
ボーデン式の場合は、押し出し速度やリトラクション量をかなり控えめに設定する必要があります。

2. 低速・安定重視の出力条件

高品質に出力するためには、

  • 速度:PLAよりかなり遅め(例:20〜30mm/s台)
  • リトラクション:最小限に(糸引き対策とのバランス)
  • ノズル温度:メーカー推奨値の範囲内で、まずは中間値から
  • 冷却ファン:強すぎると層間密着が悪くなるのでほどほどに

といった、“スピードより安定”を重視した設定がポイントになります。

3. 糸引き・ダマ対策

TPUでは、どうしても糸引きやノズル先端のダマが出やすくなります。

  • 造形温度を少し下げる(出すぎている場合)
  • リトラクションを少し増やす/速度を上げる(効きすぎない範囲で)
  • トラベル経路の最適化(空走距離を短くする)
  • 造形後のヒートガンやバリ取りでの仕上げ

などを組み合わせて、目的に応じて妥協点を探る必要があります。

4. 吸湿と保管

TPUは吸湿しやすい素材です。湿気を含むと、

  • 表面が荒れる
  • ブツブツとした気泡が出る
  • 層間強度が落ちる

といった不具合が出やすくなります。

  • 未使用時は密閉袋+乾燥剤で保管
  • 必要に応じてフィラメントドライヤーで事前乾燥

といったひと手間が、品質の安定化に効果的です。

TPUを使用した造形をご検討の方はお気軽に貴社までご連絡下さい。