戦争が材料高に影響する理由

ニュースで戦争や紛争の話題を目にすると、「遠い国の出来事」と感じることもあります。しかし、製造業の現場では、こうした国際情勢が材料価格や納期に大きく影響することがあります。

金属、セラミックス、樹脂、電子部品、燃料、物流費などは、世界中の供給網でつながっています。そのため、ある地域で戦争や紛争が起きると、直接その国から材料を買っていなくても、巡り巡って仕入価格に影響が出ることがあります。

1. エネルギー価格が上がる

材料を作るには多くのエネルギーが必要です。

金属の精錬、粉末の焼結、セラミックスの焼成、樹脂原料の製造、機械加工、熱処理など、製造工程の多くは電気・ガス・石油に支えられています。

戦争によって原油や天然ガスの供給が不安定になると、エネルギー価格が上がります。世界銀行も、中東情勢の悪化がエネルギー価格を押し上げ、他のコモディティ価格にも波及するリスクがあると指摘しています。

エネルギー価格が上がると、材料メーカーの製造コストも上がります。その結果、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料などの価格にも反映されていきます。

2. 物流費が上がる

戦争や紛争は、船や航空便のルートにも影響します。

例えば、海上輸送の要所が危険になると、船は遠回りをする必要があります。航路が長くなれば、燃料費、人件費、保険料、輸送日数が増えます。

UNCTADは、主要航路の混乱や運航コストの上昇によって、2024年前半に世界の海上輸送コストが大きく上昇したと報告しています。

材料価格そのものが変わらなくても、輸送費が上がれば、最終的な仕入価格は上がります。特に海外から材料や部品を調達している場合、海上運賃、航空運賃、燃油サーチャージ、保険料の影響は無視できません。

3. 原材料の供給が不安定になる

戦争の影響で、鉱山、製錬所、港湾、発電所、道路、鉄道などのインフラが止まることがあります。

また、直接戦場になっていない国でも、輸出規制、制裁、金融制限、通関の厳格化などによって、材料が動きにくくなる場合があります。

製造業で使われる材料は、見た目以上に国際分業が進んでいます。例えば、鉱石はA国、精錬はB国、粉末化はC国、加工はD国というように、複数の国をまたいで製品になります。

そのどこか一つが止まるだけでも、供給全体に影響が出ます。

4. 代替需要が増えて価格が上がる

ある材料が入手しにくくなると、メーカーは代替材を探します。

すると、本来は安定していた別の材料にも需要が集中し、価格が上がることがあります。

例えば、特定地域からの供給が不安定になると、買い手は他国品や在庫品に切り替えます。その結果、限られた在庫に注文が集中し、価格が上昇します。

材料相場は、実際に不足してから上がるだけではありません。「今後不足するかもしれない」という不安だけでも、先回りした買い付けが増え、価格が上がることがあります。

5. 為替が動く

戦争や紛争が起きると、金融市場も不安定になります。

日本企業が海外から材料を仕入れる場合、多くは米ドル建てや中国元建てなどの取引になります。IMFも、国際貿易や商品取引では米ドルの存在感が大きいと説明しています。

そのため、円安が進むと、海外メーカーの販売価格が変わらなくても、日本円で見た仕入価格は上がります。

材料価格の上昇には、原料相場だけでなく、為替の影響も大きく関係しています。

6. 「不確実性」そのものがコストになる

戦争が材料高につながる最大の理由は、不確実性が高まることです。

メーカーや商社は、次のようなリスクを考えます。

「次回も同じ価格で仕入れられるか」
「納期が遅れないか」
「輸出規制がかからないか」
「物流ルートが止まらないか」
「在庫を多めに持つべきではないか」

こうした不安があると、サプライヤーは価格にリスク分を上乗せします。買い手側も在庫を確保しようとするため、さらに需給が引き締まります。

つまり、戦争は実際の供給不足だけでなく、「将来の不足への警戒感」によっても材料価格を押し上げます。

まとめ

戦争が材料高に影響する理由は、単に「その国から材料が入らないから」だけではありません。

エネルギー価格の上昇、物流費の増加、供給網の混乱、代替需要の集中、為替変動、そして将来不安による在庫確保など、複数の要因が重なって価格に反映されます。

製造業にとって、材料価格は国際情勢と切り離せないものです。

当社では、こうした市場環境の変化を踏まえながら、複数の調達ルートを活用し、お客様にとって安定した材料・部品調達ができるよう努めてまいります。